第162話 独身の日

 

「お前のことは信じてるよ、けどお前は自分の罪に対しての対価を払わないとな。」 


顧海は持ち上げていた白洛因の腕を元に戻した。

 

白洛因は顧海がずっと怒りを終えていたのを知っていたし、一度それが表に出てしまえば暴力に頼る他なく、そして白洛因は苦しまなければならなかった。
白洛因が同い年の男に対してこんな弱点を晒したことは今までない。

 

しかし、本来白洛因はこんな風に甘んじて暴力を受けるような性格ではなく、白洛因の口から綺麗事が出る度に激しく後悔していた。

 

「すぐに良くなる」

 

顧海が独り言をぼやいたあと、白洛因は全力で逃げたくなった。

 

もう五月だが、夜は肌寒く、当然素肌でいればもっと寒い。白洛因が運動中に流していた汗は、白洛因の体を冷やしていた。

 

やがて、白洛因の狭い体内に顧海の熱い塊が無理矢理押し込まれ、それは痛みを伴ったものの、すぐに快楽へと変わった。白洛因は指を強く握り締めて、ゆっくりと呼吸し、感覚や感情を流そうとした。

 

おそらく立ちながらしたのは初めてで、二人はとても興奮していた。顧海は片手で白洛因を囲み、背中に胸を押し付け、激しく腰を振った。

 

白洛因の目は涙で輝いていた。白洛因はとても恥ずかしく、堕落し、興奮し、顧海を睨んだが、本心ではこの行為を、顧海の加虐心と愛を楽しんでいた。白洛因はこの行為があまりにも快楽的で初めて泣きながら喘ぎ、それはすぐに顧海の心に火をつけた。

 

顧海は白洛因の片脚を肩にかけて、白洛因の恥ずかしい部分をすべて晒した。白洛因の顔は恥ずかしさから真っ赤になり、五本の指が壁に強く押し付けられ、不規則な呼吸とうるさい脈動が混ざり合い、突然に突かれた後、全ての漠然とした感情がなくなり、果ててしまった。 

 

「…なに?」

 

白洛因の首がぴしゃりと鳴り響き、腰は抑えきれずに揺れた。白洛因の真っ直ぐな長い足は、震えで曲がっている。白洛因の手は後ろの顧海の腹部に押し付けられ、明らかな拒否を示していた。

 

これは顧海の心に火をつけるようなヒント与えてしまっていた。緩やかな律動の後、衝動的で力強い律動へと変わった。顧海はその力強い両腕で白洛因の脚を最大限に開き、マシンガンのように止まるとこなく突き続けた。

 

白洛因は、一気に快楽の波に襲われ目眩がした。下腹部に突然炎が集まり、次第に臨界点に達した。白洛因はイきたくてしかたがなかった。白洛因の体は殆ど倒れ、叫び始めた。地面に着いている足は突然に硬直し、体全体が震え始める。

 

白洛因は薄くて透明な液体を壁に吹きかけるという自分の行動に驚きが隠せなかったが、それは顧海も同じだった。白洛因が前で果てずオーガニズムの喜びを味わったのはこれが初めてだった。

 

その後、顧海は中毒者の様に白洛因を貪り続けた。そんな中、白洛因は生死の危機に瀕するスリルを体験し、時々同じように果てていた。それは莫大な肉体の消耗であったが、それよりも精神は混乱状態にあった。

 

「なぁ…もう無理だ…」


再度果てた後、白洛因は強く抵抗し始め、白洛因の声は殆ど懇願に近かった。

 

「なんでだ?」顧海は白洛因の頬をつまみ、
「お前がイき過ぎてるだけで俺はイッてない。」

 

白洛因は本当にもう耐えられなくて
「お前のそれは鉄で出来てんのか?」
と文句を言わずにはいられなかった。

 

「元々は肉だったはずだが、どっかの誰かが女を痴漢して俺を怒らせるから鉄になったんだよ」

 

そう言うとすぐにその鉄の棒が再び動き始め、白洛因は体の耐えられる限界を超えていたが、顧海は未だ冷静だった。白洛因の前に手を伸ばし動かすことで、白洛因は簡単に快楽を拾い、白洛因はすぐに悲痛な叫びと慈悲を懇願した。

 

「本当に無理だ…やめて…顧海…顧海…あぁ…」

 

「今日のことをしっかり反省するか?もう痴漢しないと誓うか?」

 

顧海は最後の念押しとして白洛因に尋ねた。


その時白洛因は完全に正気を失っており、顧海が尋ねた時はいつでも頷くように白洛因の忠実さをより高めるため、顧海はもう一度律動を強くした。白洛因は喉を伸ばすことさえ出来なくなり、白洛因の叫び声は、夜風の冷たさを超えたくぐもった音になった。喜びが二人を瞬時に照らした。

 

白洛因の白い濁りが顧海の指に伝わると、顧海の鉄はやっと元に戻った。恐ろしいほどの快楽が白洛因の体に残り、歩くこともままならなかった。白洛因が手を伸ばした時、腕はまだ完全に動く状態ではなかった。

 

セックスの後に安心したのは初めてだ…

 

寝るまでにはまだ時間があり、二人は一緒にシャワーを浴びてベッドサイドに寄りかかって一緒に映画を見ていた。白洛因はパソコンの画面をじっと見つめているがすぐに画面が暗くなってしまう。暗くなった時、パソコンは閉じようと動いたが、顧海が再び開き、また映画が流れ始めた。

 

顧海はいつもの思いやりのある男としての姿を取り戻し、白洛因が船を漕いでるのを見て、静かに「眠いか?」と尋ねた。

 

白洛因は頷いた。

 

「ほら、俺の腹の上で横になれ。」
顧海は白洛因のことを撫でた。

 

白洛因は言う通りにし、頭を顧海に預け、重い瞼を垂らし、映画の声はぼやけていた。

 

映画が終盤になると、ヒロインは突然主人公に「私の何が好きなの?」と言った。

 

男が答える前に、顧海は白洛因の顔を見た。

 

「因子ァ…因子ァ…」

 

誰かが自分の頭を撫でているのを感じて白洛因は目を開けると、顧海の顔は少し焦っていた。

 

「なに?」

 

「俺のどこが好き?」

 

白洛因は眠そうだったが、顧海の頭は完全に覚め、こんな頼りない質問を白洛因に投げかけた。


白洛因はただ「いつお前を好きだと言った?」と答えた。

 

は!?

そう言われた顧海はいてもたってもいられなかったが、白洛因は何も言わず白洛因という顧海の女王様の為に差し出された腹のベストポジションを探していた。

 

白洛因の目が覚めてくると、映画が終わりエンディングが流れ始めた。

 

「俺のどこに惹かれる?」

 

白洛因はこの問題に直面し必死に考えたが、いくら顧海の顔を見ても答えは出てこなかった。その楽しそうな顔を見ても、どこにも惹かれている気がしない。

 

「どうだ?わかったか?」

顧海はこのことを重大視していた。

 

白洛因は正直に「そんなにいい所が見つかんねぇよ」と言った。


顧海はまた怒りを顕にした。「なんて?」

 

白洛因はぎこちなく微笑んだ。
いつも白洛因の笑顔は顧海の怒りを沈めていたが、今回は顧海の怒りをより高めただけだった。

 

顧海が自分のモノを指さし「これは?」と聞くと、白洛因はすぐに横になって死んだフリをした。

 

顧海は退屈そうな白洛因を自分の腹から引き上げようとしたが、白洛因は顧海の胸を二回殴って「お前が先に言え!」と言った。

 

顧海は考えて、
「馬鹿じゃないのか、子供みたいだぞ。」
と言った。

 

白洛因は一瞬唖然とし、強い軽蔑の視線をした。


「お前には俺が馬鹿に見えるのか?俺が子供だって言ったか?」

 

「俺の腕の中で子供のように寝るだろ…」
顧海は酔いしれた顔を残した。

 

白洛因は悪寒がした。

 

顧海はまだ興奮しながら白洛因の頭を自分の胸に押し付けながら

「冗談だよ。ベイビーちゃん。ほらおっぱいだぞぉ」
と言う。

 

白洛因は怒りながら何発か殴った。


「ならその宝石売れば?」

 

「なんで?」

 

「その金で精神科のいい先生にお前の病気を治してもらうんだよ。これはビジネスだろ?」

 

顧海は失笑しながら白洛因の顔を眺めた。


「わかった?」

 

白洛因は黙った。

 

顧海は勇気を振り絞り「賢くて好きだとか、大人びてて好きだとかはダメだぞ。聞き飽きたから。」と言った。

 

白洛因がもし凶器を持っていたとするなら、顧海の口をケチャップをぶっかけた様に真っ赤に染め上げていただろう。

 

「ほら、早く言えよ。」

顧海は白洛因を急かした。

 

白洛因は横目で顧海を見て、まだ答えを告げていないことを暗い顔をした顧海を見て後悔した。

 

顧海は突然笑いだし、白洛因を枕に寝かせ毛布を掛けてやり、寝ながら白洛因の顔を見つめた。

 

「もういい。寝よう。」

 

実際、白洛因は明確な答えが出ていなかったが、二人で喋っている間は何度も好きだと思っていた。顧海の目には白洛因の好きなところばかりが浮かび、欠点でさえも好きなところになってしまう。

 

白洛因もそれは同じで、顧海の好きなところを上げろと言われても言葉にして伝えることは難しかった。

 

 

 

一年に一度のスポーツ大会が始まり、男子生徒は女子生徒にいい所を見せようとエントリーに必死になっていた。


女子生徒にはある程度の制限がかかっていたが、エントリーをする人数は十分だった。

 

学校では誰もがスポーツ大会の為に練習を重ね、授業中も、放課後も校庭にはたくさんの生徒が集まっていた。いつもは校内にいる生徒も校庭へ向かったが、草に話しかけているだけで、運動のできる男子に追いやられていた。

 

放課後、顧海の元にはたくさんの生徒が集まっていた。

白洛因は振り返って「みんな登録したか?」と聞いた。

 

顧海は首を横に振って「いや、まだ。」と答える。

 

「ほぼ全部埋まっただろ。」

 

「誰がいて誰が居ないんだがわかんねぇよ。」

 

白洛因が出場競技表を見ると、男子5000mと1500mの欄だけ埋まっていなかった。

 

「俺このふたつでいいよな?」白洛因は顧海に競技を指さして言った。

 

顧海はすぐに反対して「ありえない。1つは朝で、1つは午後の部なんだから出れねぇよ。」と言った。

 

「大丈夫だろ、ほら、もう書いたぞ。」
白洛因は既に記入してしまっていた。

 

顧海は別に白洛因の運動能力を馬鹿にしている訳ではなく、ただ単純に疲れている白洛因を見たくないだけだった。

 

「じゃあわかった。お前400mやれよ。」
と顧海は提案した。

 

白洛因はイライラして
「それぐらいしか走れないとでも思ってんのか?」
と言った。

 

顧海はため息をついて、苦しそうな顔をしている。

 

白洛因は面倒くさくなって5000と1500の欄を埋めると、400mリレーの選手も一人足りなくなっていることに気づき、そこにも自分の名前を書いた。

 

登録最終日、5000と1500を希望する者はおらず、クラス代表の顧海は困っていた。

 

「まだ400mハードルは誰もいないのか…」と顧海は呟く。

 

白洛因を頼ると身長の高い人の方がいいと言っていたのを思い出した。クラスの背の高い男子をリストアップし、後は選ぶだけだったが白洛因が見つからなかったので適当に記入した。