第186話 トンネルの発見

安心してから2週間後、この日、軍にて保安検査が行われた。その結果、顧威霆と孫警備兵の部屋に問題が出た。監察部は明記せず、状況を確認するために2人のモニターを送った。

「なんだ?」
孫警備兵は驚きの表情をした。
「私の部屋になにか問題がありましたか?」

監察部は頷いて慎重に言った。
「検査した結果、危険レベル2と判断されました。」

「危険レベル2?」
孫警備兵はそれを真剣に受け止めた。
「私の部屋の中に、なにか危険物があるということですか?」

「違います。」
監察部は急いで手を振った。
「保安検査にて危険だと判断されるには2種類あり、必ずしも武器等があるとは限りません。時々リフォームすると、監視機器が以上を示す場合があるんです。」

「そんなわけないです。私はここに4、5年住んでいますが、家具さえ変えてないんですよ?」

監察部は笑った。
「大丈夫です。私たちはあなたを信じてます。けれど、問題が発見されれば、それを取り除くのが私たちの仕事なんです。ご理解頂けますか?」

「あはは……」
孫警備兵は心から笑った。
「私は長い間軍人でしたから、あなた方の仕事をしっかりと理解してます。特に安全に関して慎重になることはとてもいい事ですし、早期発見、対応をお願いします。」

監察部は感謝していた。
「ご理解ありがとうございます。部屋を確認していきますので、何かありましたら教えていただけますか?」

「大丈夫ですよ。構わず検査をお願いします。」
孫警備兵は微笑んだ。

その後、監察部は機器を取り出して家の中を歩き回った。最初はなにも鳴らなかったが、リビングの中心でたった瞬間、機器からサイレンが鳴った。

孫警備兵はなんともない顔をしていたが、この時ばかりは表情を変えて、監察部に向かって歩いた。機器の周りには家具も何も置かれておらず、ただ足元に絨毯がひかれていた。

え?このカーペットが?
孫警備兵は疑問を示した。

監察部は機器をゆっくりと下ろし、床に近づけるとサイレンの音が大きくなった。

「このカーペットですか?」
孫警備兵はしゃがんだ。

監察部は眉をひそめた。
「そうだと思うのですが、テーブルやキャビネットならまだしも、カーペットが危険物だとは思えないのですがね?」

このカーペットが問題ではないと証明するために、監察部はこれを他の場所に持って行き、そこでも機器を向けたが、鳴ることは無かった。彼が戻ってくるとまた鳴り出したので、床に問題があるのが判明した。

2人はしゃがみこんで同時に床を見下ろすと、すぐに隙間を見つけて驚いた。監察部は鉄の破片を見つけて、そっとそこをこじ開けると、2人の前に大きな穴が現れた。

「秘密の道……」
監察部は額に汗をかいていた。

孫警備兵は信じられないような顔をしていた。
「私は4、5年ここに住んでいるが、こんな道があるなんて知りませんでした。」

監察部が降りていこうとするのを、孫警備兵が止めた。
「待ってください。ライターで試してみましょう。恐らくこれは1世紀前に掘られた道ではなく、数日前に掘られたもののはずです。」

「え……?」
孫警備兵は何も言わなかった。
「私はいつもここにいますが、誰も入ってきたことはありません。そして、トンネルを掘るには何を使いますか?」

監察部は孫警備兵の肩を撫でてなだめた。
「心配しないでください。このことを上司には伝えません。」

報告しないだと!?
しかめっ面で考え続けた。
誰かが私に危害を加えたいのか?




一方、顧威霆の家も同じような状態だった。
どの邪悪な野郎がごまかしてるんだ?


孫警備兵は手を擦り合わせた。
「私が降りてみてきます。」

監察部が止めた。
「私がやります。もし危険な状態だった場合、私の足の方が慣れてます。」

「大丈夫だ。」

孫警備兵は手を振って、素早く降りた。




「長官!」
顧威霆の部屋にいる監察部は驚いた。
「私に行かせてください!」

顧威霆は何も言わずに降りて行った。


その後、トンネルで出会う悲しき男が2人……


出てきた後、顧威霆の顔は厳粛で、孫警備兵は隣に座っていたが、横を見ることが出来なかった。

「長官、誰がこのトンネルを掘ったのですか?」

顧威霆は冷笑した。
「お前は何を言ってるんだ?私たちの他にこの部屋に誰が泊まっていたか、覚えてないのか?」

「出来ませんよ。」
孫警備兵は驚いているようだった。
「たった2人でこんな長いトンネルを、しかも短時間で掘れるわけがありません。」

「あいつらがたった2人でやると思うか?軍には多くの兵士がいるのだから、兵士が来て助ければ、このトンネルだって短時間で惚れるだろう。」
顧威霆はお茶を飲みながら複雑そうな顔で言った。

「誰かが助けに来たって、証拠がないでしょう!考えても見てください。トンネルを掘ることは、大きなプロジェクトです。シャベルはどこから持ってきたんですか?土はどこに行きました?そんな大荷物を持っているのに、警備兵が通しますか?有り得ませんよ!」

顧威霆は実際に顧海がどのように行ったのかに、興味を持っていた。

「監視カメラの映像を持ってこい。」
顧威霆は軽く言った。




しばらくして、孫警備兵が映像を持ってくると、2人の男は画面を見つめていた。映像が終わると、2人は真っ直ぐ前を向いており、その表情は見る前よりも刺激的になっていた。顧威霆の机に置いていた手は無意識に揺れていた。

「あいつが、珍しく特別な品種だと言ったのは、間違っていたか?」

孫警備兵は顧海を賞賛した。
「小海は優れた組織力と計画能力を持っています。将来有望ですよ!」

「まだあいつを褒めるのか!」
顧威霆が怒鳴った。

孫警備兵はとても怖かったが、立ち上がり、この場から逃げなかった。

顧威霆は恐ろしい顔で部屋を歩き回っている。

「才能?才能だって?私はただの馬鹿だと思うがな!大胆であることはいいことか?強い組織力があるのはいいことか?この類の子供は間違いなく社会の大きな癌になる!お前は私にあいつを支配するなと言ったな?あいつを7、8年間放置すれば、あいつは顧家が蓄積してきたものを全て壊すぞ!」

孫警備兵は怒って言い返した。
「あなたはいつも白黒にこだわり過ぎでは無いですか?」

「あなたは自分の考えが全て正しいとお思いですか?」
顧威霆は怒って、孫警備兵を殴ってやりたかった。

「人々の白黒を決めるのはその人にかかっている。あいつはどうだ?原則はない!そして卑劣だ!」

孫警備兵は黙った。

顧威霆はソファに座り、睨みつけた。
「あの夜あいつが本当に1人でクローゼットに丸くなって眠っていると思い、気の毒だと思ったが、まさかトンネルを抜けて、私を騙していたとはな!」

「それは……」
孫警備兵は言い返そうとした。

顧威霆は頭をソファに寄りかからせて、目を細め、しばらくして口を開いた。
「お前のとこの監視カメラも持ってこい。」

孫警備兵の心は苦しくなって、不安定に話した。
「もしかしたら、思春期の子供たち少し反抗的ですから、ただ楽しくてトンネルを掘ったのかも知れません!」

「持ってこいと言ってるんだ!」
怒鳴り声が上がった。

孫警備兵は冷たい手足で、コンピュータの前に立った。

監視カメラは真っ暗で、その中には何をしているのかわからないが、2つの黒い影が動いている。孫警備兵の心は揺さぶられ、彼らが下手に動き出さないようにと祈っていた。

しかし、悲劇は顧威霆が早送りした後に起こった。

2人は裸でバスルームから出てきて、灯りを消すには遅すぎる時間にベッドに横になり始めた。

孫警備兵は我慢できなくなっていると、顧威霆は隣から立ち上がり、黙って出て行った。彼が戻ってくるのを待っていたが、画面が暗くなっても、顧威霆はまだソファで目を閉じていた。その表情は怒りさえ消えたと孫警備兵は理解していた。

「私は彼らは抱き合っているのを見ただけだと言わなかったか?」
顧威霆は笑っていた。
「しかし今日は全て見たよ。」

孫警備兵は顧威霆の笑顔に青ざめた。

顧威霆は一晩中目を閉じたままだった。


翌朝早く、彼は白漢旗と邹叔母さんと姜圆を呼んだ。

初めて4人は顔を合わせてテーブルに並んだ。

邹叔母さんは緊張していて、手汗止まらなかった。彼女がこの様な高級な場所に来たのは初めてで、こんな位の高い男性に会うのも初めてだった。白漢旗は表面上穏やかに見えたが、心の中で疑問が浮かび上がっていた。
なぜ顧海の父親が私たちを呼んだんだ?
顧海は彼の父親はもう理解していると言ってなかったか?
結婚祝いのワインを飲むために呼ばれたのか?

姜圆が先に口を開いた。
「あなた、どうして私たち3人を呼んだんですか?」

顧威霆は深刻そうな顔をしながら、口を開くと、邹叔母さんの手が震えた。

「あなた方に伝えたいことがある。」
顧威霆は反対側をちらりと見た。
「この問題は非常に深刻だから、心の準備をしなさい。」

白漢旗が頷いたのを見て、邹叔母さんも頷いた。

姜圆は顧威霆の顔を見て、緊張していた。

「ねぇ、何があったの?」

顧威霆は冷たい顔で告げた。
「顧海と白洛因は異常な関係を持っている。」

「異常な関係?」
姜圆の顔が変わった。
「異常な関係ってなに?」

顧威霆は三人の顔を見て、一言ずつ言った。
「同 性 愛」

姜圆だけがショックを受け、2人は特に反応しなかった。

「どうしてそんなことが?」
姜圆の唇は紫色になっていた。
「あなた、そんなこと誰に聞いたの?」

「この目で見たんだ。」

姜圆はショックを受けて何も言えなかった。

実際には、顧威霆は姜圆がどのように反応するかは気にしておらず、白漢旗が、自分の同じ立場の白洛因の父親として、どのような反応をするかを見ていた。

意外にも、白漢旗は微笑んでいた。
「それを伝えるために、私たちを呼んだのですか?」

顧威霆は白漢旗の落ち着きに、心から賞賛した。

「あなたの意見を聞きたい。」

白漢旗は顧威霆の冷たい顔を見て、少し慎重に尋ねた。
「……あの、なんと呼べばいいですか?」

「顧と呼んでください。」

「そんな!」
白漢旗は気を使った。
「あなたの方が歳上なのですから、顧お兄さんと呼ばせてください。」

顧威霆の白漢旗の印象はとてもよく、彼の思い描いていたような人物だった。

「顧お兄さん。本日は呼んでいただき、誠にありがとうございます。2人の子供についてですが、私たち夫婦はただ2人に任せると決めています。ですからあなたが考えているように、子供を困らせるような心配はいりません。私たちは無知ではありませんから。そしてなによりも、大海が本当に大好きですから、息子に来てくれて本当に嬉しいんです。私たち夫婦は彼を本当の息子のように思ってますよ。ハハハッハハッ……」