第177話 嵐

午前中、ある人はトイレに入り、周りをきょろきょろしながら、自分のモノが取られるんじゃないかと震えた。結局、正午になってもなんの報復も受けることはなかった。

 

本当に違ったのか?

 

尤其は片付けをしながら顧海をちらっと見た。尤其が立ち上がり、ドアに向かった時、虎が乱暴に暴れるのではと恐れながら足を踏み込んだが、なんの問題もなくたどり着くことが出来た。

 

ある種こうなってる方が運が悪い。

 

幸いにも、尤其が殴られることもなければ、彼らは正常な関係にあった。

 

 

 

授業後、鐘が鳴ると杨猛は27組に駆けつけた。

尤其は無傷で外に出ることができた。

 

「よぉ!」
杨猛は尤其に声をかけると尤其は杨猛に向かって歩いた。

尤其の姿を見て、期待していたことが起こらなかったんだと理解した。

 

「服渡せた?」

 

「渡したよ。」

 

「顧海は?どうだった?」


杨猛は教室の中を見た。
「目の前でちゃんと渡したのか?」

「ちゃんと、僕の作戦通りにやった?」

 

「あぁ。」


尤其は穏やかに「悪くない」と言った。

 

杨猛はまだ心配で、眉をひそめた。
「本当に顧海の前で言ったの?聞こえるように言った?」

 

「ちゃんとやったよ」


尤其は意図的に声のトーンを下げた。
「俺が渡した時、顧海の顔色が少し変わってた」

 

「それで?」
杨猛が瞬きをしていると、尤其は鼻をかんだ。
「あえてそのあとは見てない」

 

杨猛が考えていると、誰かに肩を叩かれ振り返れば、
元々クラスメートだったやつが居た。

 

「和解したのか?」
そいつは嬉しそうに杨猛に声をかけた。

 

杨猛は最初どういう意味なのか分からなかったが、尤其の顔を見てやっと理解した。

 

「お父さんとはしたよ!」

それでもまだそいつは嬉しそうに笑っていた。


「俺は別に何とも思ってないさ。お幸せにな!頑張れ、頑張れ!」

そう言いながらガッツポーズをしていた。

 

杨猛の顔色は暗くなった。

 

廊下を歩きながら、尤其は鼻歌を歌っていた。その姿は昨日とはまるで別人のようだった。杨猛は隣を見て、軽蔑な視線を送った。


「いいの?二人がそういう関係ってことは、因子はお前のことが好きじゃないってことだよ?」

 

「それでも面白いよ」

 

杨猛は警告した。
「絶対に因子を傷つけるなよ!」

 

「俺に白洛因を傷つけられる程の力はないだろ?」


尤其の頬は太陽の光に照らされて輝いていた。自分を助けることを全くしない尤其を追いかけた。

 

「じゃあ何が面白いんだ?」

 

尤其の足音はゆっくりになった。
「あいつは独身だと思う!」

 

杨猛は今までカンフーを習ってきてよかったと、隣の男を見て思った。


なんでたくさんの女の子たちに囲まれてるのに、その子たちのことを考えられないの?


白洛因が尤其に惚れてしまえば、それは女の子たちにとって莫大な損失となる。

 

尤其は杨猛と肩を組んだ。
「なぁ相棒、今日は食べに行こう。」

 

杨猛が同意する前に、隣をスケートボードに乗った少年が通り、突然突風が吹いてきた。

 

杨猛はまだドキドキしていた。


どうして少年は僕を困らせたんだ?
心が落ち着いてないと、なにか起きるのか?


隣を見ると、尤其も自分と同じような顔をしていたため、突風を感じたのは自分だけではないとわかった。

 

尤其は杨猛の肩を撫でた。
「危なかったな」

 

杨猛の鼓動は途端に早くなって、ドッキリなんじゃないかと後ろを振り返ったが、茂みの中にも誰もいなかった。


最近アクション映画でも見すぎたかな?

 

「なぁ、タバコ持ってない?」

尤其と杨猛は足を止めた。

 

振り返ると人が後ろに立っていて、その人は180cm以上あるから、二人は彼らを見る時見上げなければならなかった。

 

しばらくして、尤其が答えた。
「タバコ吸わないから、持ってない」

 

左に立っていた男が突然ライターの火をつけた為、尤其は一歩下がって、マンホールの蓋を踏んだ。

 

「ライターは持ってるのにタバコはないのか?」

杨猛の顔が青ざめた。

 

「タバコ、買ってこようか?」

 

その男はライターを片付けた。
「いや、いいよ。お前を吸う。」

 

杨猛の足は震え、その顔は野生の菊のようだった。

 

「忘れてくれ。俺たちはクラスメートで、今日は偶然会っただけだ……」

 

そう言うと男は杨猛の首を掴み、杨猛の足が浮いた。

 

「ごめんなぁ。今日はもう行かなきゃならないんだが、これだけは覚えておけよ。物事を組み合わせるのはお前次第だ。混ざってはいけないものは混ぜるな。」

 

五秒後、豚を殺すような鳴き声が鳴り響いた。

 

「ねぇ、平手打ちしていい?」

 

尤其は叫んだ。
「ダメに決まってんだろ!これから北京映画のインタビューに出る顔なんだから!」

 

「顔がおしりか、自分で選べよ!」

 

「その後お前にも仕返しするぞ!」

 

 

 

 

家に帰ると、二人は対面に座って、顧海は机を叩きながら白洛因を見て笑った。

 

「お前から話せよ」

 

白洛因は恐れなかった。
「何を?」

 

顧海は顎を下げた。
「わからないのか?」

 

「言うことなんてないだろ」

 

いくつかの火が顧海の瞳の中で爆発したが、顧海はそれを抑えた。

 

「あの服はなんなのか教えろ」

 

「一緒に買ったんだ」

 

顧海が拳を握りしめると、骨がギシギシと鳴った。

 

「俺を怒らせたいのか?」

 

白洛因の表情が変わった。
「全部わかってんだろ?尤其の家に一泊して、服を忘れたんだ」

 

白洛因の控えめな表現は、顧海の血を逆流させた。

 

「一泊したのか?本当に一泊か?」

 

今まで、白洛因はそれを隠す必要が無いと感じていた。

 

「一泊以上だったかもしれないが、思い出せない」

 

顧海は落ち着きと冷静さを保ったが、沸点はすぐそこまで来ていて、少しでも刺激すれば簡単に爆発できる所まで来ていた。

 

「俺から話すから尤其には聞かないでくれるか?」

 

白洛因は無表情で呟いた。

 

顧海は拳でテーブルを殴り、その亀裂は、顧海の手から白洛因にまで届いた。白洛因の表情が一変すると、顧海は白洛因のことをカーペットに落とした。

 

「白洛因、俺はお前に優しくしすぎたようだな?」


顧海は白洛因の上に跨り、深刻そうな真っ青な顔をしていた。

 

「お前には秩序がないのか?たった二十日間離れてただけで他の男のベッドで寝やがって。二年も離れたら俺が誰なのかすら忘れるんじゃないか?」

 

「顧海、何言ってるんだよ」

白洛因も怒っていた。


「伝える必要がないと思ってたから言わなかったんだ!他の男のベッドで寝たって?お前は俺をメス猫とでも思ってんのか!男を見たら発情するとでも!?尤其も男で俺も男だ。寝てる間に何かがあったとでも考えてんのか!お前と出会う前、何人の男と一緒に寝たのかも、全部一々教えなきゃならないのか!?」

 

顧海の顔は暗くなり、荒々しい声で怒鳴った。

「俺と会う前の事は気にしねぇよ。けど俺とこうなった後に他の男と寝るのは違うだろ!」

 

「何が違うんだ?」


白洛因は燃料を投下した。

「お前は他の人と俺を寝かせないで、俺に寝方でも教えようとしてんのか?尤其とお前の違いはなんだよ?大きい鳥か小さい鳥かぐらいだろ?俺が小鳥と眠ってベッドで何かすると思ってんのか?」

 

顧海は怒りで唇が震えていた。


「お前と尤其を埋葬してやるよ」

 

「やってみろよ。もっと聞きたいか?あいつと寝る時、俺は裸で寝てた。その日は酔っ払っていて、お前と寝る習慣が出て、起きた時下着を履いてなかったんだ!俺がどんな気持ちだったと思う?想像したくもないか?時間をやるから想像してみろよ。」

 

顧海の目は充血していて、顔にはもう感情がなかった。

 

「白洛因。お前は火遊びをしてるって気づいてないのか?」

 

白洛因は冷笑した。


「顧海、脳みそがないのか?世界中の人がお前と同じ脳みそだったら、お前が顧洋と海外にいたことにも怒るのか?」

 

「顧洋とは兄弟だ。」


顧海の顔は冷たかった。

 

「俺だってお前の兄だ!」

 

顧海は白洛因の首を絞めて、その瞳はただの黒い玉のようだった。そのまま白洛因のベルトのバックルを外さずに引き抜いた。

 

「白洛因、今すぐ謝れば許してやるよ!」

 

白洛因の顔は顧海によってとても歪んでいた。瞳の中は暗くて冷たい光が宿っている。

 

顧海は白洛因のズボンを引っ張り、怒鳴った。


「信じられないかもしれないが、今からお前を殺すぞ!?」

 

「信じられない理由があるか?」

 

白洛因は皮肉を投げた。

「お前は俺の人生の半分を殺しただろ?横になってお前が必死になってるのを笑って見てやるよ。」

 

顧海の手は震え、何度も意識を取り戻そうとしたが、白洛因のその態度を見て一蹴された。